【乙女ゲームシナリオ】ヘタレ年上キャラ

自作乙女ゲーム『私の前世は戦国武将!?』のシナリオより


(シーン説明)

主人公の井上直緒(高2)が、夕方近所のコンビニへアイスを買いに行き、レジへ並ぶとそこにはお金が足りなくて困っている倉下智実(会社員24歳)が。五百円を貸すと号泣され、そそくさと帰宅しようとすると待ち伏せされていて…。



//背景:住宅街の道(夜)

コンビニを出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。

急いで家へ帰ろうと走り出そうとしたら……


//倉下_汗_中央

突然脇道から先ほどの男性客が現れた。


【?】

「あのっ!!!」

【直緒】

「きゃっ!!! な、何!?」

【?】

「驚かせてごめん! さっきはお金をどうも……お礼を言おうと思って。」


どうやら彼は、私を待ち伏せていたらしい。


【?】

「今は持ち合わせが無いので、とりあえずこのお釣りの150円を……。」


そう言ってお金を握った手を目の前に差し出す。


【直緒】

「いえ、気にしないでください。そのお釣りもいらないので……。」

【直緒】

(あまり関わりたく無いし……。)


すると……


//倉下_泣き_中央

【直緒】

(また泣くの!?)


しょうがないので、渋々そのお釣りを受け取ろうとした。


【?】

「あ、ゴメン。これは違うんだ……別にお釣り受け取らないから泣いたんじゃなくて……。」

【?】

「ちょっとこれには事情があって……引かないでくれると嬉しいんだけど、無理かな……。」


そう言いながら彼はガックリと肩を落とす。


【直緒】

(何だか憎めない人だな……。)


そう思ったら、段々おかしさが込み上げてきた。


//倉下_笑顔_中央

【?】

「良かった。引いて無い?」

【?】

「実は今仕事の休憩中で、すぐ会社に戻らなきゃならないんだけど、」

【?】

「500円返したいから、君の連絡先教えてくれないかな?」

【直緒】

(え…何それ……。まさか新手のナンパ……じゃないよね?)


ナンパされるほど世間的に自分が可愛いとも思っていないが、たかが500円で連絡先まで訊くものだろうか?


//選択肢

・連絡先を教える

・連絡先を教えない


//選択肢:連絡先を教える

【直緒】

(でもどこかの会社員みたいだし……悪い人では無さそう。)

【直緒】

「わかりました。いいですよ、連絡先交換しても。」


//倉下_照れ_中央

【?】

「本当に!? あ、ありがとう! 嬉しいな。」

【?】

「もし断られたら、土下座するしかないと思ってたよ。」

【直緒】

(それってどっちにしろ教える一択じゃん!!)

【直緒】

(もしかして、ヤバい人に出会っちゃったのかな……。)

//倉下_削除

//合流点へ


//選択肢:連絡先を教えない

【直緒】

「いえ、それは別に返さなくても……。」


何だか怖くなって断ろうとしたが、彼は道端にも関わらずいきなり目の前で土下座をし始めた。


//倉下_必死_中央

【?】

「お願いします! この通り!! 500円返させてください!!」

【直緒】

「ちょ……ちょっと!? やめてください! 人が見ますから……。」

//倉下_削除

//合流点へ


//合流

車通りのそれ程激しくない住宅街とは言えど、帰宅途中の人通りは少なくない。

それにしても、成人男性というのはこれほど面子を大切にするモノなのだろうか。

疑問に思いながらも私は、仕方なく連絡先を交換した。


//背景:自室(夜)

家に戻り、自室でアイスを頬張りながらスマホをいじる。

さっき登録したコンビニ号泣男のアドレスを表示した。

名前は『倉下智実(くらしたともみ)』。年齢は二十代前半から半ばといったところだろうか。


【直緒】

「あの人の土下座、何か見覚えがある気がするんだよな……何でだろ?」


//メール着信音

そんなことを考えていたら、早速本人からメール着信があった。


【倉下智実】

『連絡先交換してくれてありがとう。今度会った時はお金を返したいので、また会ってくれると嬉しい。』

【直緒】

(まだ返そうとしてるのか……困ったな。)

【直緒】

『お金は返さなくてもいいですって。(^^;』


そう返信すると、


//メール着信音

【倉下智実】

『そういう訳にはいかない。大人のお兄さんを舐めてはいけません。o(`ε´♯)o 』

【直緒】

(何この顔文字。可愛い……)

【直緒】

(案外悪い人では無いのかも?)


そう思い、つい調子に乗って『路上で泣いてたくせに?』と返したら、暫く返信が途絶えてしまった。


【直緒】

(もしかして怒らせた?)


少し後悔していると、今度は長めのメッセージが返って来た。


//メール着信音

【倉下智実】

『実はあれには理由があって……』

【倉下智実】

『君を初めて見た時、僕がよく見る夢の中の大切な人に雰囲気が似ていると思ったんだ。』

【倉下智実】

『夢の中で僕はその人に仕える家来で、その人を本当に尊敬していて大好きだった。』

【倉下智実】

『なのに何故か、その人の首を刎(は)ねる夢を何度も見るんだ……。』

【倉下智実】

『それを思い出して、気が付いたら涙が止まらなくなってた。』

【倉下智実】

『こんな話をしても、君には気持ち悪いだけかもしれないけど……。』